恋魔大戦

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”命短し、恋せよ乙女・・”  それって、古いのかなあ。  有名な宝塚歌劇団という、おばあさんの代から続く有名な歌劇、女性が男の人の役もしてミュージカルをするという、歌って踊っての華やかなステージ。それは、不思議な空間だ。そこで歌い継がれている、テーマソングらしい。おばあさんも、おかあさんも、時々鼻歌で歌っている。お爺さんやお父さんと結ばれた後でも、それは、二人のテーマソングだというのが、なんとなくわかる。  二人とも、ご町内では”若い”とよく言われる、公平に見ても確かに、美人だと自慢していいお母さんに、おばあさんだった。なんだか、二人とも熱心にお化粧をしているかというと、案外そっけないものだと、知っている。しないわけではないが、あっさりとしたもの。まあ、それが二人の化粧”ノウハウ”だということらしいが、お化粧をしないということでもない。 「もともと、女の人はきれいなんだから、それを隠して作り変えるんじゃなくて、もっと強調するのが大事なんだからね」ということなのだ。これは、秋のお祭りで稚児行列に並ぶということで”おめかし”したときに、お母さんがお化粧で顔を白く塗ってくれたときに、教えてくれたことだった。  お祭りの稚児行列というのは、神様に向かって、おめかしをして、お会いする、そういうイベントらしい。3歳のときの話なのだから、ぞろぞろと街中と参道を歩くだけしか覚えていないのだけど、なぜかその中で、お母さんが教えてくれたことが妙に頭に残っているのだ。 ”神様も、やっぱり、かわいい子が好きなんだから・・”それは、そうではない子には厳しい言葉かもしれないのだが、当時のあたしは、それをそこまで考えることもなく、受け入れていた。 ”神様もえこひいきするんだな・・”そんなことを、なんとなく覚えている。  ああ、しかし、そういうことなんだ。  幼稚園とかに通うようになれば、世の中は不公平だということは、十分にわかる。  体の大きな子には、腕力、喧嘩ではかなわないのである。  頭の回転のいい子には、お勉強でかなわないのである。  かわいい子には、やはり、みんな集まるし。そうじゃない子は、それなりにお友達の間で自分の居場所を一生懸命探して、そして、それなりに見つけていくものだった。そうやって、大きくなって、大人になったときに、”社会”というものの一員になるための知恵を、いろいろな成功や失敗の繰り返しの中から、いろいろやって磨いていくのだ。
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