恋魔大戦

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 お勉強も大事だが、多分、自分のような平凡な人間は、お勉強よりも、そうやって、それこそ”かわいいお嫁さん”になって、一生を終わっていくのだろう。  そんな”決まった路線”が自分の前には広がっているのだろう。そんな風に簡単に、人生を考えていたような気がする。  そうやって、男に混じりながら、戦隊もののTV特撮番組を見ていた記憶がある。モモ・なんたらや、敵の魔女役をやって、遊んでいた。これといって、体が大きいわけでもなかったが、そのすばしこいことでは、自分は大いに自信を持っていて、乱闘ごっこになれば、なんだか負ける気がまったくしていなかった。  ”三つ子の魂、百まで”などといわれるが、自分の中に、あの幼稚園時代の自分の経験やら記憶が、しっかり根付いている自覚があった。  後に言われれば、そんなことを考える子供なんて、博物館か動物園に展示されるべき、珍しい存在らしいが、彼女は、友達にそれを指摘されるまで、一度もおかしいと考えたことはなかった。  もっとも、では、自分が”普通の女の子”だったかというと、そうだとも、そうでないとも、いえなかった。  全然別だとは思わないが、かといって、じゃあ”普通の女の子かな?”といわれたら、”どこか違うみたい”という答え方をするしかなかっただろう。しかし、だからといって、周囲と大きく隔たったかのような違和感もなかった。たぶん、人生とは、そういうものなのだろう。そして、平凡に生きて、平凡に結婚して、平凡に死んでいくのだろう。  根拠というほどの根拠ではないかもしれないが、”平凡”な子供だった自分は”平凡な人生を送るのだろう”という経験的な結論を、その人生の最初に決めていた。”平凡”というのは、彼女の、人生のキーワードであったのである。そして、実際、”勉強の成績も、そこそこ平凡””運動の成績もそこそこ平凡、少しドジ”という、安直な道を選んでいた。”自分は平凡なんだから、そこそこで満足”別に勉強しないわけではないが、それなりに理解したと自分で納得したら、それ以上やろうとする意欲はなくなってしまうのだ。そうして、そこそこドジなかわいい”お嫁さん”になる。  その後、ちょっとしてから、”学校を出たら、お嫁さんになる”という路線はこの時代には存在しないことを知る。ちょっとどこかで”仕事をしてから”お嫁さんになるという路線変更があったが、まあ、それは大幅な、とはいえなかっただろう。だから鷹垣人美にとってその人生とは、ダイヤモンドに”平凡”と彫り込んだほど、それは確実な路線だった。
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