恋魔大戦

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 鷹垣人美は、星林学園小学部5年生。ただの普通の女の子である。と、本人は言っているんだよな、一応。  でも、それって、どうなんだろうね。人美くんは、もしかしたら、自分で自分を”平凡な女の子”のイメージの中に押し込めようとしているのじゃないか、そう考えたことはないかい?  大人の中には、自分をとても才能のあるえらい人間だと、本当はそうでもないのに、勝手に思い込んで、周りにいろいろ迷惑を書けいる人がいるようだけど。逆に、人美くんのように、自分に勝手に”ここまで”と線を引いて、それ以上がんばらないようにしている人も、いるんじゃないかな。  そして、それをいえば、読者諸君は、いったいどうなんだろうね。君も、”自分はこんなもの”と勝手に線を引いたり、逆に”自分はもっとできる”と考えたり、”自分は全然ダメなんだよね”と最初からあきらめたり、”自分はこんなにがんばっているのに、うまくいかないのは、周りの人が悪いからだ”と勝手に思ったりしていないだろうか。  いや、実際は、小さいときの経験から、そう考えるようになったということなんだろうね。でも、それって、その理由は小さいときの経験、体験から考えたことではあることなんだけど、それが、”今現在”でも有効かどうか、考えてみれば、少しはその環境というか、条件が変わっているものだよね。  昔は知らなかった知識も、増えているし、体だって幼稚園とはぜんぜん違うのに。そういう変化を、考えに入れているはずなんだけど、案外、それをはっきりと意識してやってはいないんだろうね。  それが人間という生き物なんだって言ってしまえば、そういうことなんだけど。そのまま、小さいときの意識を、心の奥底に抱いたまま、大きくなってしまう人は、多いんだよね、実際。  というか、鷹垣人美君は、まさに、そういう心の場所にいるわけなんだ。今日までは。 「人美ちゃん、今度、転校生がクラスに入ってくるの知ってる?」 「そうなの、みちるちゃん」 「そうなんだって、先生が職員室で話をしているのを聞いたんだ」 「ふうん」  みちる、雛崎みちるは、本が大好きで、本当に頭がいい。だから、クラスの級長をやっているのだ。そういうことで、先生とクラスの間で、職員室に呼ばれても、人美のようにしかられるなんてことは絶対にないのである。
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