恋魔大戦

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 だから、ウイングシティというときには、湘南市だけじゃなく、いくつかの都市の組なのだけど、いまでは、そんな”細かいこと”を気にしている人は、少ない。実際がところ、ウイングシティになってから、ここに移り住んできた人もかなりの数になるからね。  だから、そういうことで、この町の学校、転校生も特別に珍しいことではなくなっていたんだ。それでも、転校生に興味深深なのが、普通だと思うのだけど、人美は案外に興味がないのだった。なぜか新しい”情報収集”にまったく興味がなかったのである。その意味では、たしかにクラスの女子たちとは、人美は違っているのだったんだよね。  かといって、女の子たちから”いじめ”をうけるようなこともなかった。なんだか、いじめを受けても、あるいは、気がついていないだけかもしれない。そういう図太さが、人美にはあった。それが良いか悪いかはわからないが、それも、ひとつの処世術なのかもしれない。どんなクラスでも、人が集まる場所では”いじめ”が起こる・・それが、人間という生き物には付き物なのだ。そういう発想が、人美にはあった。”いじめ”はダメなのは理想だけど、”いじめ”を通じて、グループの中の力関係を図るのが、人間という生き物の本性だからだ。  ただ、本来的に言えば、それがたとえば誰かを徹底的に追い詰めて、自殺に追い込むようなことはない。ただ単にグループの中で、力関係を図る本能が源だからだ。グループの仲間を追い詰めるまでやらないのもまた、本能の知恵のはずなんだよ。  ところが、その本能の歯止めを超えて、追い詰めてしまう場合がある。それは、いじめる側といじめられる側の化学反応のようなものであるから、両方が、そうした異常な化学反応をおこさないように”ブレーク”する。それが知恵というもので。人美は、あまり深く考えることなく、そのブレークをすることができたようだ。  その”賢さ”を級長のみちるが気に入って、人美を友達にしてくれたらしい。 「そうなんだ」ちょっとみちるがため息をついたようだった。 「どうしたの、みちるちゃん。何か、あるの?」 「なんだか、クセのある子みたいで先生が、クラスでうまくやっていけるか、心配しているみたいなの」 「あらま、でも、どうして、あたしなんかに、その話を」 「クラスでみても、そういうの、人美ちゃんが一番いいかなと思って」 「あたしに、その転入生の友達になってということ?」 「まあ、言っちゃえば、そういうことなんだけど、どう、頼めるかなあ」 「なんだかなあ、あたし、ほら、”それなら、まかせなさい~っ”て性格じゃないでしょ」 「そうね、いまのあなたなら、そうかもしれないけど」 「・・・みちるって、時々、不思議な言い方するね」 「そう?ま、わたしは、夢見る宇宙人みたいなところがあるからね、勘弁して頂戴」 「本当に宇宙人だったりして」
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