恋魔大戦

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「まさか。でも、似たようなものだったりして」 「本を読みすぎると、そうなっちゃうのかな」 「?」 「本の中のことと、現実の区別が付かなくなっちゃうとか。なんだか、3D映画にはまっちゃうと、現実世界に戻りたくないって人が出てくるって、何かで言っていなかったっけ」 「そうかもしれないわね。確かに、現実の世界より、物語の世界のほうが、素敵に見えちゃうから。この素敵な世界から戻りたくないって、本気で思ったことがあるわ。泣いちゃったことも」 「そうなんだ、さすが、みちるちゃん。あたしゃ、そこまで物語を読んだことがないからなあ。まあ、漫画でも、同じだけど」 「それは、本当は、とても、人としてまっとうな、いいことかもしれないわね」このとき、みちるは、本当に人美をうらやましそうにいったんだ。 「そうかあ、また転校生?」 「まあ、ね、おかあさん」台所に立つ母の背中に、人美は言った。  おかあさんは、ガミガミと人美に手伝えとは言わない。もっとも、人美が手伝うとロクなことにならないのを知っているからだろう。邪魔をされたくないと・・  でも”お手伝いをさせないと、ますます下手になっちゃうわよ”と、おばあさんが言ってくれるのだが。なかなかリベンジの機会は与えられないのであった。 「ウイングシティが転校生が多いのはわかるけど、ほんとに学園はどんどん、人を入れるわね。それで、勉強がおろそかにならないのかしら」 「・・・って、それでおかあさんはあたしを学園に入れたんじゃないの?あたしは、別にあそこじゃなくても、公立でよかったのに。授業料、安くないんでしょ?」 「いつも言うけど、のんびり屋のあなたは、少し厳しいくらいのところに行くのがいいのよ。公立では、あなたは、だめになっちゃう」 「そ~かなあ、あたしは身の丈ってことを大事にしたいんですけど」 「だから、あなたの身の丈は、そんなところじゃないんだから」 「そういうのを”買いかぶり”とか言うんじゃなかったっけ」 「そういう難しい言葉もいえる様になったのね、感心、感心」 「ども、です。で、あたしの”花嫁修業"は、どうなっているのでしょうか、お母さん」 「あなた、珍しいわね。今の時代、”お嫁さんになりたい”なんていう女の子、そんなに多くないんじゃないの?」
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