恋魔大戦

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「今日は、みなさんに、転校生を紹介します」 「わあああい」  しかし、それで歓声が上がるのは、やはり古今東西、代わりはないわけで。 「入ってきなさいな」美人の斎木美弥先生が言う。  美人で、グラマア。女と生まれたなら、こんな、ぼん・きゅ・ぼんの体になりたいと望むような、色っぽさである。ああ、同じ女子が、こんなことを考えるのはおかしいと思う人もいるかもしれないけど、確かに、全員がそうだとは言わない。だけど、ほら男子でも逆三角形の筋肉質の体を理想とするようなものと一緒で。やはり、一種の理想体型なのは間違いないのだろうね。これもまた、人間、何万年もの歴史のなせるわざと言うか、本能なんだから、それを否定しても始まらないと思うんだ。 「はい・・」  そう返事をして入ってきたのは、あまりぱっとしない少年だった。 「大上円(まどか)くんです。円と書いて、”まどか”とよぶのよね、あいさつして」 「どうも・・大上円です、よろしくお願いします」ぼそぼそと小さな声でいう。  大柄ではないのに、その体のサイズであることがすまないような、気の小ささだった。 ”え、あいつの世話をあたしがするの、みちる?”思わず、人美は、級長のみちるを見た。 ”当然”とみちるは、人美を見返す。  理由はまったくないのだけど、女の子の世話をすると勝手に思い込んでいた人美は、困ってしまった。  どうみても、イケてない男子なのだ。それでいて、かわいげもなさそうで。というわけで、人美が、積極的に彼をケアしなければならない理由が、まったくないのだった。 「あの制服は、ヨコハマの”聖マリア御心学園"のじゃないの」誰かが言った。 「そういえば、あの胸のマークの聖母の絵は、それだよね、俺も、何かで見たことがある」 「ヨコハマの山の手にあって、日本一のエリート、金持ち学校・・だよね」 「そ、やっぱり君たちも知っていたんだね、そうじゃなきゃ、一言言っておこうかと思ったけど」斉木先生も、生徒たちの言葉を聞いて、そういったんだよね。「大上円くんは、そういう子だから、よろしくたのむわね」 「おおお!」  その瞬間、この風采のぱっとしない男の子が、ヒーローというか、”エリート、お金持ち”オーラに包まれたのは間違いない。  ただし、それを大上生徒が自分でやったのではなく、まわりが勝手に彼に、そのオーラをおっかぶせたというのが、実際なんだけどね。でも、こういう変化は、仮面*イダーの変身と一緒で、一瞬にして起こる化学変化なんだよね。だからこそ、オーラをかぶせる側も、まったくそれに気がつけないんだよね。
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