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宇宙服の二人は操縦席に座ると宇宙船を発進させた。
「しかしまぁ、ヘルメットを被るだけ幸せになれるなんて、悲しい生き物ですね」
「まぁ、そう言うな。誰でも自分の欲望に忠実な世界を見せられたらああなるものさ」
宇宙船の外には高速で遠ざかるひんやりとした星がうつっている。
「そうだ船長。これもう脱いでもいいですか」
「そうだな、いいだろう」
二人が宇宙服を脱ぎ捨てると、その青白い顔には6つの目と2つの口があって、手は3本、足は1本だった。それを無理やり宇宙服の中にいれていたのだった。
「こんな服を着ないと宇宙に出れないなんてかわいそうな種族ですよ、ほんと」
「まぁ、そういうな。お陰で楽に乗っ取れたじゃないか」
船長は宇宙船の物入れから棒状の物を2つ取り出して、1つを部下に渡して口に加えて吸った。
「原住民の処分も、手間はかかるが終えたし、我々の仕事も終わりだな」
加えていない方の口から煙を吐き出しながら、船長は言った。
「宇宙の法律では、同種族以外の殺害は禁止されてますからね。あの男のお陰で手間取らずに済んでよかったですよ」
「それに今じゃアイツも貴重品さ」
操縦席の小さな画面には銀色の寝台に拘束されている男が写っている。
「そうですねぇ。なんせ、宇宙最後の地球人なんですから」
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