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五章:どうして
夕方、三人は帰路につこうと駐輪場へ向かっていた。
しかし、到着してみると図書館の近くで見かけた集団が屯していた。
歩が思わず「うわっ……」と声を出してしまったがため、集団は睨んでくる。
三人はそそくさと自転車に向かうが、集団の一人が並んで停めてある自転車を蹴り飛ばしてきた。自転車はドミノのように倒れていき、一優たちの自転車も倒れた。
一優と友也は何も言わず自転車を起こそうとするが、歩が怒りを滲ませた声で集団に向けて言葉を投げた。
「何すんだよ?」
「あ? 邪魔だったからどかしただけだ。それにテメェが気に入らねぇ面してるしな」
集団はゲラゲラと笑い出す。対する歩は集団に向けて足を向けた。
「大瀬、帰ろうよ。別に自転車が壊れたわけじゃないから」
「調子に乗ってる連中には痛い目に合わせないと気がすまねぇんだよ」
歩の発言に集団の目つきが明らかに変わり、全員が立ち上がった。
「調子に乗ってるのはテメェだろ。雑魚は雑魚らしくしとけよ」
「頭の中がお花畑の連中が何言ってんだ?」
歩の挑発に集団はゆっくりと近づいていく。友也は「どうしよう?」と一優に問いかけたが、一優は疼く額を押さえていた。
耐え難い程の痛みに一優の表情も歪み、友也は「ど、どうしたの?」と声をかけてくる。だが、一優は生唾を飲み込むと歩の前へ出た。
歩は驚きで声を上げ、集団の一人も「はい、もう一人雑魚が増えた~」と嘲笑してくる。
歩は「下司、いいって」と言ってくるが、一優は集団を睨み付けた。集団のリーダーと思しき人物が一優の目の前に立ち、見下ろしてくる。
「三秒待ってやるよ。ま、俺たちは野球やってるから逃げ切るなんざ無理だけどな」
一優は何も返さず、ただ見上げる。カウントを始めても一優は微動だにしなかった。
三秒数え終わったと同時にそのリーダーは一優の顔面に殴りかかるが、一優はひらりと避けると、そのリーダーの肩を殴った。
周囲から驚きの声が上がる中、リーダーの人物は一優の横顔にめがけて平手打ちを繰り出す。しかし一優は身を屈ませ、後ろへステップを踏んで避けた。
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