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その男の名前は羽計通。四十八歳、月刊心霊のジャーナリスト。
渡された名刺を一瞥すると、私は男を見据える。
クククッと口角を上げて笑う細身で初老のおじさんは、近所の喫茶店に私を呼び出し、真向かいの席に座っている。
「すいませんね、急な取材をお受けしてもらっちゃいまして。」
「……いいえ、特に用事も無かったので。」
「それでも有難いですよ。」と彼は頭を下げた。
「それで、あの……何の取材なのでしょうか?」
「実は私は、某県でもう閉園した夜想野アイランドというテーマパークだった場所で起きている不思議な出来事について、特集記事の製作を任されているんですよ。」
「そう、……ですか。」
「なので是非とも、貴方にお話を聞きたいという訳でして。」
「……あの、どこで知ったんですか?」
「と、いいますと?」
「……この話は一人の友人にしか話していないんですけど。」
「あぁ、それは、……そのご友人から聞きました。」
えぇ~、と私はため息を吐く。今にも頭痛が起きそうだ。
「お喋りなアイツなら嬉々として喋るでしょうけど、なら私から話す必要はないですよね?」
「いえ、これは私の取材をする時のモットーでして。」
「モットー?」
首を傾げると、男は大きな声で言う。
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