10人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
第二章 神社の一日は早起きから
翌朝は五時に起きた。
昨日までは六時起きだったから、いつもよりちょっと早い。
それでも気分は爽快! カーテンを開ければ琵琶湖の景色。窓を開ければみずうみの風がさあっと吹き込んでくる。
わたしとのどかは、二階の空き部屋にそれぞれふとんをしいて寝た。
部屋にあった鏡でおさげをつくり、一階に下りる。
家と社務所はひと続きになっている。というか、ひとつの大きな家の中を住居部分と社務所に分けている感じ。宮司を代々務める息長の一族は、昔から境内の中に住んできたらしい。みちるさんは昨日までひとりでここに住んでいたし、今日からはわたしとのどかがそこに加わるわけだ。
「おはよう!」
「……おあ、よ」
社務所の控え室には、白い和服に水色の袴を身にまとったみちるさんがいた。その前には半分眠ったままののどかが立っていて、みちるさんと同じ和服を着させられている。
「あ、和服。いいなー」
「次はしずかの番よ。今日はわたしがやるけど、次からは自分で着られるようにね」
その和服は、神職が日常的に身にまとう装束らしい。
みちるさんに着せてもらいながら、いろいろと説明を聞く。
白い和服は白衣という名前で、袴の水色は浅葱色と呼ぶそうだ。新撰組の装束の色と同じらしい。新撰組と聞いてのどかが一瞬目を覚ました。のどかは歴史とか伝承だとかが好きみたいで、いつもそんな本ばかり読んでいる。
「わたし、てっきり巫女さんの服を着るのかと思ってた。あの赤い袴、かわいいのに」
「巫女と神職はちがうの。神職は神社を運営したり、祭祀を取りしきったりする人で、巫女はその補助をするのよ」
「へえ。立場がちがうのね」
「そうよ。でも神社のためにお勤めをするのは同じ。神仕えにとってもお勤めはとても大事なものなのよ。日々お勤めにはげむことで、人との縁や土地との縁を強めていくの。ほら、しっかりやっといで」
と、みちるさんはわたしとのどかの背中をばしんとたたいた。
最初のコメントを投稿しよう!