ひんやりさせてくれるぜ

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「第一埠頭の岸壁まで行け。おかしな真似しやがったら、俺達は引き金を引くのを躊躇わねえぞ」 後部座席の高野が笑い、少し遅れて助手席の織田が笑った。嫌な笑いだった。 「身体を調べろ」 高野から命じられた織田が、俺の身体を探り始めた。 織田は、俺の懐の拳銃を探しているのだ。 俺達の住む世界は非情だ。頼れる者は己のみ。そして拳銃は最後の切り札であり、生き抜くために無くてはならない御守りだった。もしも拳銃を取り上げられてしまったら、万事休すだ。 俺はアクセルを踏み続ける。クルマは国道を真っ直ぐに進んでいた。目指すは俺の墓場になるであろう第一埠頭の岸壁。 深夜二時。俺の生命は、まさに風前の灯だった。
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