ひんやりさせてくれるぜ

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織田のゴツゴツしたヤクザな手が、俺の身体を執拗に探り続けている。 織田の指先は、いつまでたっても俺の懐の拳銃を探り当てられずにいた。織田の手のひらが、まったく見当外れな辺りを行ったり来たりしていた。 「織田、拳銃(ハジキ)は見つかったか」 ドスの効いた高野の声が、後部座席から低く届いた。 「いや、まだです。今、探ってますんで」 織田の手のひらが、俺の太ももの辺りを行ったり来たりしている。 織田は、まだ俺の拳銃を探り当てることが出来ない。 クルマは時速六十キロを保ちながら、俺の墓場となる第一埠頭を目指している。 時々すれ違う対向車のヘッドライトが、来世と現世を結ぶ走馬灯のように儚く通りすぎてゆく。 「織田、中川の拳銃はあったのか」 「今、探っております」 織田の手のひらが、俺の首筋から肩の辺りを撫で回していた。 俺の拳銃は、まだ俺の懐にある。 拳銃を構成する鋼鉄の地肌のひんやりした感触が、辛うじて俺の生命を繋ぎ止めている。 「織田、拳銃あったか」 「今、探っております」 織田の悪行が滲み出たザラザラの手のひらが、俺の股間と尻を何度も行ったり来たりしていた。 「あったのか、織田」 「あと、もう少しです」 織田の指先が、俺の胸の辺りをくすぐっていた。 「織田。まだか」 「まだです」
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