ひんやりさせてくれるぜ

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「ようし。降りろ、中川」 後部座背の高野から急かされ、俺は車外に降りた。織田と高野が続いて降りた。 「手を高く挙げろ」 背中に銃口を感じながら、俺は岸壁の端まで歩かされた。 波間の遠くに、工場の灯りがゆらゆら揺れていた。 足先よりもさらに下側を見下ろしてみた。真っ暗な海が、おれを葬り去ろうとして不気味にさざめいている。 「こっち向け。海に背中を向けろ」 高野に命じられ、俺は言う通りにした。 俺の寿命は、秒を読む段階に入っていた。 目の前に、拳銃を構えた織田が立っている。 その隣には、腕を組んだ高野が仁王立ちしている。高野の手には今、拳銃がない。きっと高野は、俺の始末を織田にやらせるつもりなのだろう。 「中川、言い残すことはあるか? 無いのか。ようし、織田。殺れ!」 俺は、固く両目を閉じた。 しかし、銃声がいつまで経っても聞こえて来ない。
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