ひんやりさせてくれるぜ

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俺は、再び両目を開けてみた。 織田が、拳銃を俺に向けたまま、首を捻っている。 苛々した様子で、高野は怒鳴った。 「何してやがる。早いとこ()っちまえ」 「弾丸が出ません」 無表情な織田が、しれっと言い放った。 高野が、何かを叫びながら、組んでいた腕をほどいて懐の拳銃を取り出そうとしている。 だが、俺のほうが早かった。 俺は両手を下ろし、上着を跳ね上げた。懐から拳銃を取り出した。ひんやり冷たい銃把が、さっきまで怯んでいた俺の精神をシャキッとさせた。 拳銃を高野に向けながら、親指で安全装置を外した。 二度、引き金を引いた。 赤い火炎を吐いた銃口の先には、既に高野の姿は無かった。拳銃を握った手を下ろしてみると、高野が見えた。 高野は死んでいた。 コンクリートの地面の上に、高野の死骸が大の字を形作っていた。
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