ひんやりさせてくれるぜ

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「おい、中川。てめえ近頃、俺のことを腰抜けだと言って回ってるそうじゃねえか」 後部座席の声が、八月の熱気に澱んだ空気を一変させた。 俺はステアリングを握りしめたまま、ルームミラーに視線を泳がせた。兄貴分の高野が、鏡越しに俺を睨んでいる。高野の目が、危険な光を帯びて据わっていた。 「何のことです」 覚えがないことを、言われている。 確かに高野は腰抜けだ。 だとしても、俺は兄貴分の器量に点数つけて触れて回るような真似など、ただの一度もした覚えがない。 「兄貴が言い掛かりつけてるってのか? 往生際が悪いぜ、中川」 助手席の織田の右手に、拳銃が光っていた。 撃鉄が起きる音が、冷たく響いた。 後部座席からも、弾丸をチャンバーに送り込む金属音が響いた。
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