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そんな矢先、ふと見慣れない店を見つけて足が止まる。閉店した店と店の間。周囲には薄暗い路地に繋がる道しかなく、賑わう街中からは隔離されたこの場所。
『四季屋』。
扉の前にかかった暖簾にはそう書かれている。聞いたことのない店だと周囲を見回せば、ぼんやりと歩いているうちに訪れたことのない場所まで歩いてきていたことに気が付いた。
一体何の店なんだろう。
店先には、メニュー等が書いてある看板もない。何かをアピールするような貼り紙でさえも見当たらない。
……店、なんだよな?
心の中でそう疑問に思いつつ、俺は暖簾の向こうを見つめる。アンドロイドとはいえ透視能力があるわけでもない。この中を確かめるには、中へ入るしかないのだ。
無性に気にかかった俺は、暖簾をくぐって中へと足を踏み入れた。
薄暗い店が顔を覗かせた。昔の駄菓子屋みたいに、幾つも箱や棚が置かれている。そこに陳列されているのは、ここから見る限りでは小瓶ばかりだった。
異質な空気を感じる店だ。
そう思いながら奥を見据えれば、カウンターの向こうに座る一人の少女と目が合った。
胸元まで伸びる艶やかな濡羽色の髪に、両耳につけられた赤い水引のピアス。睫毛が青い影を落とす真白な肌。じっとこちらを見つめる桃色の瞳は、いつかの桜を思い出させた。
じわりと熱気が籠る店内にも関わらず、彼女は長そでのセーラー服を身に纏っていた。
その様子で、一目で俺と同じように過去に取り残されたアンドロイドだと分かった。人間でないという確証を持てたのは、目元にアンドロイドの証であるアルファベットの羅列と小さなバーコードが刻まれていたからだった。
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