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父親と買い出しに行く
月に2回、日曜日、山のふもとにある蝶塚市のイオンモールへ生活必需品の
買い出しに行く父親のお供を仰せつかる。うちの父親、住職のくせに、車は
大型の四駆なんだよ。正直、似合わないけど、友達はカッコいいと言ってくれるので、微妙。
「猪鹿町は冬によく雪が降るから仕方あるまい。」
父親はそう言ってるけどさ、なんで帽子をかぶり、ジャケットにデニム、ブーツと恰好つけるんだろう。
確かに、年齢はまだ30代後半なんだけど、坊主らしくないぞ。
僕の服装は、学校の体操服が楽でいいんだけど、父親はそれは絶対にやめろと言う。
仕方ないから、あるメーカーの紺の上下、ブランドのスポーツウエアを着る。ちなみに、父親にお正月の福袋で買ってもらったものだ。
これでもかって、バレンタインデーの催し物が行われている中、眼もくれず、せっせと買い物を済ませ、僕たちは、車に積み込んだ。
「いいか、今から1時間30分だけ、自由時間を与える。待ち合わせ場所は、
いつもの書店、未来書房だ。私が遅れても、ずっと待っていろ。いいな。」
「はい。」
満面の笑みで伝える父親に、僕は素直に返事する。
『こいつ、絶対、僕に見せられないことやっているぞ。』
そう思うけど、僕も自由時間は楽しみにしているから、それ以上気にしない。早く自由になりたい。
僕たちは、駐車場で別れた。
「どうしようかな。イオンモールの近くにあるブックオフに行こうかな。
ゲーセンに行こうかな。マックのハッピーセットも食べたいな。」
散々、迷った僕はブックオフに行くことにした。
その時の選択が僕の人生を大きく変えることになろうとは、夢にも
思わなかったんだな。
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