愛を確かめるための

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愛を確かめるための

 蒔苗はそっとアカリに口付ける。動画の中で見たような、病院でされたような、優しく軽い口付けが何度も唇に落とされ、やがてアカリの側がそれだけでは堪らなくなる。  両腕を蒔苗の後頭部に回し逃げないようにしてから、唇と唇はぎりぎり触れない程度の距離でアカリは舌を出す。様子を伺うように唇を軽く舐め、合わせ目をつうっと舌でなぞるとあっさりと開き、侵入を許してくれた。  不安がなかったわけではない。生々しい反応を返す相手との接触に長年拒否反応を示していた相手だ。急に気分が悪くなることや、嘔吐することだってあるかもしれない。  でも、例え今日が上手くいかなくたって、明日がある。  明日もダメなら、明後日も、来週も、再来週も。  アカリは蒔苗と唇を深く合わせ、まずは前歯の並びを舌で確かめる。キスに慣れない蒔苗はどう振る舞えば良いのかわからないようで、しばらくの間はされるがままになっていた。しかし、アカリがさらに歯列を割ると、見よう見まねといった様子で舌を絡め返してきた。 「ふぅ……ん……」  舌と舌の絡まる生々しい感触と、口内から直接耳に抜けるぴちゃぴちゃという濡れた音に否応なしに興奮が高まる。最初は遠慮がちだった蒔苗も、深いキスの快感に目覚めたのかアカリを押しつぶさんばかりに体重をかけ、強く抱きしめて口の中を貪ってくる。 「んんっ!」  上顎をざらりと舐められるとそれだけで背筋が泡立ち、下半身がむずむずしてくる。アカリは蒔苗を抱き返す腕の位置を腰のあたりまで下げて、硬くなりかけてきた自分のそこを蒔苗の腰にはしたなく擦り付けた。我慢できず、発情期の動物のように腰を押し付けながら、キスの隙間からせわしなく喘ぎ声を吐く。  動かし疲れた舌がすっかりくたびれてようやく蒔苗はアカリの唇を離す。蒔苗は夢中になりやすいというか凝り性というか、いったん気になったものは徹底的に弄び尽くすタイプなのだろう。しつこく舐められ吸われた唇はじんじんと、腫れているような感じがした。 「服、脱ごっか」  アカリの側から言うと、蒔苗はいったん体を起こす。密着していた体温が離れてしまうのは少しの間とはいえ寂しいが、重ね着していたTシャツを焦れたようにまとめて頭から抜いた蒔苗の裸の体にアカリの興奮はさらに高まる。
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