愛を確かめるための

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 アカリの自慰を手伝う時には脱がなかったから、アカリが蒔苗の裸を生で見るのははじめてだ。少しぼけた動画でしか見たことのなかった体が今目の前にあって、当たり前のようにアカリもそれに触れていいのだ。 「うわ、やっぱろくなもん食ってない割にいい体してるよな」 「『やっぱ』……?」  喜び勇んで胸やら腹やらをぺたぺたと触っていると不審な目を向けられる。いけないいけない。カメラを仕掛けてアカリを抱く蒔苗を盗撮したことは、絶対に知られるわけにはいかない。何でもないとごまかして、アカリも勢いよく服を脱いだ。  先ほどの行為で既にアカリの下半身は勃起し先端を濡らしているが、蒔苗のそこはまだ静かなままだった。いかんせんはじめてのことなので上手くいくかはわからないが、向かい合って座るとアカリはそこに手を伸ばす。 「やだったら、すぐやめるから。少し触ってみてもいい?」 「上手くいかなかったら、ごめん」  蒔苗も男だ。そのあたりは不安なのだろう。 「いいよ、ゆっくりでも。今日でおしまいってわけじゃないんだから」  アカリがそう言うと、蒔苗もうっすら笑った。  はじめて触れるそこはそこそこ立派な代物で、手に載せるとずっしりとした重みを感じる。まずは手の中に収め、軽く強弱をつけて握りしめてみる。それからゆっくりと手を上下に滑らせ、気持ちいいであろう程度の力で扱く。しかし。  ——ぴ、ぴくりともしない。  伊達に長年死人専門右手が友達で人生過ごしてきたわけではない。蒔苗はなかなかの強敵だった。 「これは?」 「気持ちいい」 「じゃあ、これは」 「気持ちいい」  だが、返事と裏腹になぜかペニスは柔らかいまま。先端をくすぐっても、下の袋を揉み込んでも、裏筋に指を這わせても、勃起してくれない。ゆっくりでいい、などと殊勝なことを言ってはみたものの、やはり面白くないアカリは思わず身を伏せ、まだ柔らかいままのそれに唇を寄せた。 「あ、明里?」  蒔苗は明らかに動揺した。そりゃそうだろう。死体は絶対にフェラチオはしてくれない。  まずは舌だけ伸ばし、先端をぺろりと舐める。それから少しずつ唇を使い、亀頭部分を口に収めると、わざとちゅぱちゅぱと音を出しながら口から出したり入れたりを繰り返す。たまに強く吸い上げる動きを加えると、これで落ちない男は——。  しかし蒔苗のそこは、かすかに芯を持ちはじめたような気はするものの、勃起にはほど遠い。なんとか蒔苗の反応を引き出そうとして躍起になっていると、ふいに冷たいものが耳に触れる。驚いて歯を立てそうになり、アカリは慌てて蒔苗のものから口を離す。 「何すんだよ、あぶな……っ、あ」  蒔苗はアカリの耳に触れた指を、耳の裏からそのまま首筋へ滑らせ、鎖骨のくぼみをくすぐる。繰り返された自慰のサポートで知り尽くされた、弱い場所のひとつ。
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