明里亮介の秘密

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 本日も首尾は上々。対面した相手は容姿、物腰ともにアカリの想像の上をいっていた。  百八十センチ超えの長身に、ジム通いを趣味にしているだけあって適度に筋肉の付いた細マッチョ。抱き締められるところを想像すると、それだけで腰がうずいた。  なにしろ、ここのところレポートや発表準備で忙しくてそっちの方はずいぶんご無沙汰だったのだ。 「どうしよう、アカリくん。もしメシ食ってないならどこか行く? 苦手なものとかある?」 「うわあ、マジですか? 超腹減ってるんで嬉しいです! 何でも食べられます!」  大げさに驚いて見せるが、こちらとしては一食分の金を浮かす気で早めの時間を指定しているのだから、食事に誘ってもらわなければ困る。そして、アカリの「さも食事に誘われて驚いている姿」がポーズだということは相手もおそらく百も承知だ。  でも、こういう関係ではポーズこそが重要だったりするのだ。お互いの下心をわかった上で、礼儀正しくうわべを取り繕ってみせる、それはポーズというよりむしろマナーの一種と言っていい。  ちなみに「アカリ」は本名ではない。といっても架空の名前というわけでもなく、明里(あけさと)亮介(りょうすけ)の姓を音読みして、親しい友人は昔から彼を「アカリ」と呼ぶ。  ちょっと女の子っぽくはあるものの、覚えやすくて自分でも気に入っている呼び名だし、妙な源氏名で呼ばれるのも好きではないので、出会い系サイトにもその名で登録をしている。  雰囲気の良い居酒屋で軽く飲みながら改めて自己紹介をし、腹も満たしてほどよく雰囲気がほぐれたところで二人は店を出た。人気の少ない通りに入ると男はそっと手を繋いできた。 「ここからは、ホテルで良い?」 「えっと、実は……」  少しでも相手が引くようならばすぐにあきらめようと思っていたが、意外にも男は二つ返事で公園での行為に同意した。  近くに何度かセックスに使ったことのある公園があるので、アカリは男を連れてそこへ行く。  近場の人々からもハッテン場だと認識されている小さな公園なので、遅い時間にお仲間以外が入ってくることがまずもってないのも安心できる。たまに他のカップルの声がうるさいときはあるが、それはまあお互い様といったところ。  さすがに地面でやる気にはなれないので、空いているベンチを探すが、今日に限ってはその必要もなかったらしい。男は立ったまま行為に及んできた。
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