ひんやり屋

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「こちらもどうぞお召し上がりください。よく冷えたザクロジュースになります。ああ、私がやりますのでそのままで大丈夫ですよ」  残る最後に冷やしたい場所――肉体の内側にある五臓六腑をも冷却させるため、紳士がその冷たいジュースを運んできて、目隠しした私の口にストローを咥えさせてくれる。  その際、おそらくはグラスに入った氷であろう。カラカラとそれらのぶつかり合う音がして、その音だけでもなんとも涼しげだ。  耳で涼を感じた後、優しく口に当てられたそれを咥え、窄めた口で勢いよくジュースを吸い上げる……。 「んんっ…!」  すると、脳髄に雷が突き抜けるかのような冷たさと、得も言われぬ甘酸っぱい味が乾いた口の中に広がった。  さらにそれをごくりと飲み込むと、その衝撃的な冷たさが食道から胃、胃から十二指腸、十二指腸から小腸……否、消化系の縦方向ばかりでなく、肺や肝臓、膵臓に筋肉や骨にも、徐々に体内の四方八方へと染み渡ってゆく……。  嗚呼、本当に心も体も芯から冷やされ、そして癒されてゆく……先程までいた屋外が地獄ならば、ここはまさに文字通りの天国かもしれない。 「それでは、こちらが本日最後のサービスとなります。さあ、どうぞ目隠しをお取りになってください」  時間が経つのは早いもので、そのようにすべてを忘れて極楽気分に浸っている内にも、サービス提供時間の30分が過ぎようとしているらしい。 「いやあ、本当にひんやりすることができました。このままもっと長居をしたいくらいですよ……」  私は朝、ベッドから起きるのが億劫になるのと同じような心持ちになりながら、紳士に感謝の意を伝えて目隠しを外す……のだったが。
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