Coming of summer

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「なるほど。もっともらしい理由を並べてくるのはさすがね、平丹羽くん」  満足げに頷く平丹羽。 「だけど、それは難しいんじゃないかしら」  瞬間、彼は口元を固く結んだ。が、この程度は予想の範囲内だ。 「難しい、というとどの部分で?」 「効果のほどが曖昧だわ。CMに上手く煽られてるだけじゃないの? あなたらしくもない……」  平丹羽にとって、それはおあつらえ向きの答えだった。 「そういうことなら心配いりませんよ」言って、彼は中谷と宮間にある合図を送った。中谷はごくりと唾を呑み込んで覚悟を決めた。 「会長、わたしからもいいでしょうか?」中谷が言った。 「実は、わたしたち女子バスケットボール部はこの二週間、平丹羽くんの案の実用性を確かめるために、毎日カミングクーを飲み続けていました。部活動中もそれ以外も、学校にいる間はずっとです」言いながら、中谷は郁実のなんとも冷ややかな視線(彼女にはそう見えた)に気づき、どっと汗が噴き出すのを感じた。「せ、選手たちが練習の合間に口にすると、どうでしょう、さっきまでの苦しげな様子はどこへやら。まるで生まれ変わったかのように表情はすっきり~……。溌剌として動きにもキレが……それに首元に当てるだけでもひんやり~と……」耐えかねたのか、中谷の言葉は次第に消失していった。彼女の正面から、平丹羽が睨み付けてきた。  それを見て、今度は宮間が立ち上がった。 「会長、実は僕たちもカミングクーを」
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