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「これはどういうことだ!?」会議の後で、平丹羽は中谷に詰め寄った。
「ごめん。でももう用は済んだから」
「どういう意味だ?」
「すんませんね、先輩」突然、廊下の向こうから声がした。振り向くと、二人の女子生徒がこちらに近づいてくるのが見えた。
「誰だ?」
「わたし、近藤衛子っていいます。二年です。中谷先輩にはわたしに協力してもらうようお願いしました」
状況が呑み込めない平丹羽。
「つまり、嘘つきの平丹羽先輩の代りに、わたしが生徒会長に口利きしたんです。中谷先輩の要望をね」
「な、なぜ?」かすれ声で、平丹羽が言った。
「満菜とわたしは幼馴染みなんですよ。あの子におかしな虫がつかないように監視するのが、わたしの役目なんです。昔からずっと。そうしないと危なっかしくて。あの子はほんとに可愛いから。先輩の目的がなんなのかは知りませんけど、あんまり変なことされるとほっとけないんですよね。だから、ここにいる詮索好きの一年生に調べてもらったんです」
「どうも」と軽く会釈する。「暴いちゃいました。まあ、わたしもすっごく気になってたし、どうして学校中にカミングクーが配られるようになったのか。いやあ、なんかすいません」
「別に、満菜を応援してくれるのはいいんですよ。有り難いですよ。カミングクーを学校中に広めてくれたのも、きっと満菜は喜ぶと思います。でも、それとこれとは別っていうか……」
カミングクーのお礼は、わたしが代りに言っておきます。ありがとうございます。衛子はそう言ったが、平丹羽の耳にはほとんど入っていなかった。頭の片隅で、君にお礼を言われても嬉しくもなんともないなどと考えもしたが、あくまでも無意識の領域でのことで、彼自身の理性的な意識の下に出てくることはなかった。
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