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美麗双子の裏の顔
その日の夜、事は起こった。
夜中にパチリと目が覚めて、喉の渇きを覚えたため少々面倒ながらもキッチンへ向かうことにした。
するとぼんやりとリビングに灯りがついていて、話し声もするため二人も喉が渇いて下りてきたのかなと思う。
さすが三つ子シンパシー。こんな夜中に同じタイミングで喉が渇くなんて……と、妙に舞い上がってしまったため夜中にあるまじきハイテンションで声をかけようとした。
――――が、刹那。
「羅々ちゃんの歯ブラシ盗ったの純だろ」
そんな低い声が聞こえてきたため、今まさにドアを開こうとしていた手を止める。
……ん?『とった』?『買った』ではなく?
『とった』って……もしかして『盗った』ってこと?
え……いやまさか……なんて脳内では否定しているのに、凍りついたようにドアノブから手が離せない。
戸惑ってる間にもどんどん展開していく二人の会話。
「それを言うなら粋だって。シャーペン?マグカップ?聞いてないけど?」
「いいじゃんそれくらいセーフでしょ。でも間違いなく歯ブラシはアウト。事前申請を所望する」
「いやいや、僕より多く盗っておいてよく言うよ」
「……ふーん。そっちが数を出してくるなら言うけどさ、この前羅々ちゃんのハンカチ洗ってる時気付いたんだよね。以前付いてたシミが消えてるなーって」
「……ッ、」
「まあすーっごく小ちゃかったから傍目には気付かないと思うけどね?」
「チッ」
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