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「はいはい。どうせ私は出来の悪い物書きですよ…」
先生は拗ねた声でそう仰いました。
「甘酒、甘酒、甘酒いらんかえ…」
通りからそんな声がしました。
先生はピクリと顔を上げて、窓の外を見られました。
夏の暑い日に甘酒売りがやって来ます。
先生は毎日それを楽しみにしておられるのです。
冷たく冷やした甘酒を夏の午後の楽しみにしておられます。
「来たな…」
先生は背中越しに座る私の顔を覗き込んでニヤリと笑われました。
「来ましたね」
私も同じように笑うと、二人で同時に立ち上がりました。
そして先生と競う様に書斎を出て、玄関に向かいます。
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