甘酒師匠

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甘酒売りは他にも来るのですが、この時間に来る甘酒売りだけが冷たい甘酒を売っているのです。 下駄を履いて二人で慌てて表へ飛び出します。 しかし毎日先生が甘酒を買われる事を甘酒売りも解っており、先生の家の前に大八車を止めて待っておられました。 白井さんも後から出て来られました。 大八車を牽く老人と娘、この甘酒売りの甘酒は絶品で、冷たく美味しいのです。 しかし、今日は娘さんが一人で大八車を牽いておられました。 先生はその娘さんに指を三本出して、 「三杯下さい」 と仰いました。 しかし、この三杯は私と白井さんの分と言う訳ではなく、ご自分で三杯召し上がられる分です。 娘さんが器に注いだ甘酒を先生は美味しそうに飲んでおられます。 その後ろから私と白井さんが同じように一杯ずつ注文します。 私は娘さんから冷たい甘酒を受取りながら、 「今日はお一人ですか」 そう訊きました。
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