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「そうですね…。氷室で寝たい気分ですね」
私は昼間の甘酒売りの娘の話を思い出しました。
「流石に氷室は寒いでしょうけどね」
先生は灰皿を引き寄せ、煙草に火をつけられました。
「人ってのは贅沢なモノで、暑いと涼しさを求めて、寒いと暖かさを求めます。無いモノ強請りなんですね…」
低くなった月を見ながら先生は微笑んでおられました。
「白井君も同じです。私が毎回ちゃんと締切を守っていたら、うちに来る口実が無くなってしまい、文句を言う筈なんです」
私はその言葉に笑ってしまいました。
薄々感付いてはいたのですが、白井さんは先生が締切を守ると多分不愉快な筈なのです。
白井さんは白井さんで上手く先生を理由に会社を抜け出しておられるのでしょうから。
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