生物

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生物

全身の血が引いた気がした。 だが、入れ違いのように彼女。美咲から電話がかかってきた。 「美咲…!!大丈夫か!?」 「葵君。あのね…本当は言いたくなんてなかったの…。でも落ち着いて聞いて?…実は今まで美玲さんに閉じ込められてたの…。」 美咲の声は早口で掠れていて震えていた。 「何言ってるんだよお前…?」 「私ずっと美玲さんに嫌がらせされてたの…。葵くんと付き合ってからずっと。」 何を言っているのか本当に理解できなかった。 「美玲がそんなことするわけないだろ!!何言ってるんだよ!夢でも見たんじゃないのか!?」 美玲がそんなことするわけない。俺の幼馴染みで優しいあいつが。そんなこと。 「…信じてくれないの?」 「お前少し疲れてるんだよ。少し休め。」 「……そう…。…ねえ。あのプレゼントさ。もう見た?」 その一言で俺は、大学で貰った生物が入った紙袋の存在を思い出す。 「あっ。やべ。」 冷蔵庫の奥に突っ込んでいたせいで、完全に忘れていた。 「あれさ!とりあえず捨ててくれない!?実はあげるの間違ってて!まだ開けてなくてよかった…!明後日新しいの持っていくね!」 さっきまでの反応とは一変し、彼女の可愛らしいドジぶりに相変わらず愛しさを感じながら承諾する。 その様子にやはりさっきのは気が動転して見た夢なんだろうと思い込む。 それに美玲は行方不明なんだ。美咲のためにあんなことまでしてくれたのに。今はただ美玲のことが心配で心配で仕方が来なかった。 紙袋をゴミ箱へ運ぶ途中、変な臭いがすることに気づいたが、生物なんだから、そうかと思い、特に気にもせず、捨てた。 結局、その次の日も美玲から連絡が来ることは無かった。明後日に来ると言っていたはずの美咲との約束時間はもう一時間も過ぎていた。 「遅いな。美咲。」 その時、インターフォンが鳴る。やっと来たかと思い、ドアを開けるが、そこに美咲の姿は無く、宅配便のおじさんがいるだけだった。 サインをして受け取ると、そのまま机まで持って行き、静かに置く。 差出人不明。生物です。と書いていた。まさかとは思ったが美咲ではないかと思い、箱を開ける。 そこには目を疑う物が入っていた。
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