彼女

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彼女

俺が彼女に声をかけられたのは大学の講義が終わり、帰宅しようと友人と大学内を歩いているところだった。彼女は俺が気づいたのを見ると、足を止めて鞄を漁り始め、紙袋を取り出し、俺に差し出す。 「それは?」 「葵くんもうすぐ誕生日でしょ。忘れたの?」 誕生日。確かにそうだが、まさかこんなに早く貰うとは思わなかった。彼女は押し付けるようにして俺に紙袋を渡すと、鞄を持ち直し、「じゃあ。」と言って反対方向へ小走りで去る。かと思いきや、足を止めて「あ。そうそう。それ生物だからさ、ちゃんと冷蔵庫に入れるか早めに開けるかしてね。」 そう言って再び反対法を向き、小走りで去っていく。 俺の横にいた友人は俺の肩をつつき、揶揄ってきたが、それを無視して家へ向けて歩き出した。 いつもと何一つとして変わらない。講義を終えて、家に帰り、扉の前で鍵を出す。いつも通りだ。 しかし、そこで俺はポストに何かものが入っていることに気がついた。開けてみると、綺麗に包装してある長方形の箱があった。宛先人を見て誰からなのかを確認する。差出人を見て、溜息を零すと鍵を開け、家に入る。 家の中といえど、真夏だ。部屋は、温い空気が充満していた。疲れた体を癒す為、即座に冷房を入れて、空気が冷えた頃にソファに倒れ込む。 「疲れたぁ…。」 溜息と共に情けない言葉を吐き出す。夏は外に出るだけでも体力を使う。それに加え、昨夜の睡眠時間も少なかった。眠気に襲われ、そのまま眠りかけた時、紙袋の存在を思い出す。 確か、生物だったはずだ。鉛のような身体を起こし、紙袋を取るとそのまま冷蔵庫に突っ込む。そのついでに差出人不明のポストに入っていた箱をゴミ箱にいれる。 それにしても、なんでこんな真夏に生物なんか選ぶんだと疑問に思いながらも疲弊しきった脳はそんな疑問を解き明かすよりも、睡眠をとるべきだと睡眠を促す。 夕方にも関わらず、俺はそのまま夢の世界へと堕ちていった。 俺には三年前から付き合っている彼女が居る。津山美咲。笑顔が可愛いらしく、少し天然だ。そこすらも愛おしく思わせる。 俺は大学四年生で、彼女は一つ下の大学三年生。俺達は元々高校が一緒だった。美咲が俺に片想いをしていたらしく、俺と一緒の大学に合格出来たら付き合って欲しいという様な告白を受け、悪く思わなかった俺はそれを承諾し、今となっては俺が彼女にぞっこんだ。 平和で喧嘩がありつつも幸せな日々を送っていたが、半年前から異変が起きた。 一週間に二度の頻度で差出人不明の謎の手紙や郵便物が送られてくるようになった。 最初はまだ良かった。だが、最近は、二日に一回のペースで送られてくるようになり、内容もかなり酷い。精神的にも参ってしまう。 挙句の果てには、ストーカーの被害にも遭う。 そんな奴にもし、美咲のことがバレたら。と思うと、不安で不安で仕方がなかった。
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