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ひきつった表情を浮かべる男の視線の先では、人の三倍はあろうかという巨大な獣の姿。
それはまるで燃えているかのように、青白い炎に包まれている。
「はっ、コイツはおもしれー! どうやらお前の魂は、猫ちゃんじゃなくてワンちゃんだったみたいだな」
百合奈を守るように彼女の前に現れた化け犬は、鋭い目つきで男を睨んだ。
すると、男のナイフを握っている右手が突然黒い炎に包まれる。
その黒い炎は鎖の形へと姿を変えると、彼の右腕にきつく巻きついた。
「な、なんだよこれ! どうなってんだ!」
もはや泣き声にも近い声で叫びながら男が言った。すると彼の前に降り立ったツバサが口を開く。
「さてさて、それじゃあ最期の仕上げといきますか」
そう言うとツバサは木の上にいる化け犬を見上げる。そして大きな声で叫んだ。
「おい化け犬! このガキの血塗られた運命を断ち切れ!」
その言葉を合図に、獣は男に向かって突然飛び出した。
「ぎゃっ」と叫び声をあげる間も無く、鋭い牙をむき出しにした化け犬の口が、一瞬で男の身体を飲み込む。
その瞬間、彼の右腕に巻きついていた鎖がちぎれ、青白い炎の中で灰となって消えた。
あまりの恐怖のせいか、化け犬の口から吐き出された男は気を失っていた。
その姿を見て、「よし」とツバサが満足げに声を漏らす。
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