役立たず天使

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 そこでゼツ婆は言葉を区切ったかと思うと突然ダン! と裁判官のように手元にあった巨大なハンコで机を叩いた。 「じゃかお前さんは天使の仕事もせずに呑気にスマホゲームなどにうつつを抜かし、本来の仕事を全うできとらん! そんな奴に、住む場所も生活費も出せるわけないじゃろ!」  耳をつんざくようなゼツ婆の言葉に、思わずツバサは両耳を塞ぐ。だか、こっちだって生活が掛かっている。ここで引き下がるわけには…… 「なぁ、頼むよ。だったらなんか俺にも仕事くれよ」  態度を変えて甘えたような口調で話すツバサに、相手は呆れたように大きくため息をつく。 「仕方ないのう……ならお前さんに仕事をやろう」 「ほんとか!」  その言葉にツバサの表情がパッと明るくなった。 「ったく……」とゼツ婆は声を漏らすと立ち上がり、背後のある引き出しへと向かう。 縦横およそ一〇メートル以上はあるであろうそれは、『天木(てんぼく)』と呼ばれる天国だけに生える木で作られた特殊な引き出し。 何百とあるその引き出しの中には、自分たち天使が人間たちに届けにいく『魂』が入っている。 その引き出しの一つを引っ張り出したゼツ婆は、中から一つの魂を取り出した。
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