役立たず天使

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 ゼツ婆の言葉に、ツバサが押し黙る。すると相手はやれやれと言った具合に再び口を開く。 「心配するなツバサ。この魂を届ければ、今月の家賃は考慮してやる」 「今月って……」  そのあまりの短い期間に、ツバサはため息を漏らした。  しかし、そんな彼の様子を気にすることもなく、今度はゼツ婆が落ちついた口調で言った。 「よいなツバサ。この魂の持ち主の名は『天城百合奈(あまきゆりな)』。(カルマ)のカレンダーによれば、彼女は本日中には天寿を全うせずに死ぬ運命になっておる。それを何としてでも阻止するために、この魂を一刻も早く届けるのじゃ」 「……」  ハイともイイエともはっきりと答えず、ツバサはぶっきらぼうに緑のスライムを右手で掴むとポケットへと突っ込んだ。 それを見たゼツ婆が、「この罰当たりめが!」と彼の頭を勢いよく叩いたことは言うまでもないが……
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