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生意気娘
「はあ……なんで俺がこんなことしなきゃならないんだよ」
現世へと降り立ったツバサは、交差点の信号機が変わるのを待ちながらぼそりと呟いた。
久しぶりに着た仕事用のスーツはヨレヨレで、さっきから袖の皺が気になる。
それに、ネクタイがやたらとキツイ。ちょっと太ったかな俺……
そんなことを考えながら周りの人間に合わせるかのように交差点を歩き始める。
一応俺たち天使と言えど、見た目は人間とそう大差ない。普段は翼もないし、変な輪っかだって頭につけてない。あんなもの、人間たちが勝手に作った妄想だ。
「はぁ」と何回ついたかわからないため息を漏らして交差点を渡り切る。
ゼツ婆の情報によれば、ターゲットは一三時四七分にこの辺りに現れて、そして、十五時二〇分に命を落とすことになっているらしい。
「とりあえず、しらみつぶしに探すか……」
そう言うとツバサは目の前に見える病院へと向かう。
俺たち天使は、『死』の匂いに敏感だ。
ゼツ婆からもらった人間の情報で、まずは大まかなエリアに降り立って、そして対象の人物と一度でも接触すれば、GPSなんてなくてもどこにいるのか感覚でわかる。
あとは、いつでもどこでも翼でひとっ飛び、ってなわけだ。
女子高生のガキとなれば、どうせ病気か事故で病院に入院してるってことでだいたい相場は決まって……
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