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遅れを取った誘導も進み始めて順調だったのに、無色だった空気が紫がかる。
「守りが消えた!戦闘態勢を取れ!」
ロイド隊長の声と同時に魔獣が一体、二体と現れ始める。
「弱まっていた結界が崩れたの!?」
「違います!アイツら僕がここにいると気づいて、目障りな僕を殺す為に守りを解いたんです!」
クリス神官の目に、さっき垣間見えた敵意の色が浮かぶ。
魔獣の出没に人々はパニックに陥って、泣き喚いて逃げ惑う。騎士隊では収拾がつかない上に、魔獣の数が多すぎて対応できない。
結界がまだある王宮寄りの道まで逃げるしかないが、それまでに被害は増えるだろう。
「クリス神官も逃げましょう!」
私は立ちすくむ彼を動かそうとしたが、彼はその手を弾いてその場に正座した。
そして何かを捧げる様に、掌を空に向けて腕を広げ、頭を地面につくほど下げて呟いた。
「精霊よ。この場に安らぎの守りをお与えください」
その瞬間、彼を中心に温かな光が広がった。
光は一瞬だったが、その一瞬で魔獣は一掃されて紫がかった空気が澄む。
「す、凄い!こんな力持ってるなら、早く使ってくださいよ!」
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