冷たい手

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温まってきたのだろう。クリスの震えは少しずつ収まっていく。 「すみません。ご迷惑をかけて」 「大丈夫です。それより何が起きてるのか教えてください」 王宮に向かう道でそう問えば、彼はためらいつつも話し出した。 「神官の力の仕組みです。神官は精霊に、人間の熱、つまり体温を別の力に変えてもらっているんです」 「体温を別の力って……」 「力を使うほど、身体が冷たくなるんです」 私を助けてくれた時に感じた冷たさは、力を使った事による体温の低下だったという事だ。 「その服も体温保持のためか」 「はい。なるべく太陽で温まるように。寒さが弱点と分かりやすいので、この仕組みは神官内の機密なんです」 「でも、さっきあのエリアを守るだけでもこんなに凍えているのに、国中を神官たちだけで守れるの?」 「……」 「……もしかして、他人の体温でもいいのか?」 クリスが黙ったところに、ギル先輩が苦々しく言う。
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