冷たい手

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私に抱きしめられているだけだったクリスが、やっと手足にも力が戻り、手を握ったり開いたりする。 王宮までは、もうあと数分だ。 「フレアさん、お願いがあるのですが」 「はい!何でも言ってください!」 「もう少し回復したいので、僕も貴女の身体に触れていいですか?」 「……も、もちろんです!」 本当は恥ずかしいが、有事である。そんな事言っていられない。 クリスの手がもぞりと動いて、私の服の中に入ってくる。その冷たさに「ひゃっ」と思わず声が出た。 正直、男性経験皆無の私には、自分から進言したとはいえクリスの身体に触れている事自体恥ずかしかったのに、今度は直に触れられて顔から湯気が出そうなほど恥ずかしい。 「フレアさんの中、熱くて気持ちいいです」 「……神官様、その発言は問題あると思うぞ」 「あ!いえ、変な意味ではなく……」 「アハハハハ」 私は笑って気を紛らわす事しかできなかった。
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