冷たい手

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最近、王立騎士団の第六隊に所属された私は、ギル先輩に自主訓練の相手をお願いしていた。 しかし、涼しい季節とはいえ、強い日差しにやられてしまったらしい。 鈍臭い自分を鍛えたかったのだが、焦り過ぎてしまった。 木陰に寝かされ、知らない人にまで看病させて、迷惑極まりない。 「意識もありますし、もう行っていただいても大丈夫ですよ?」 「いえ、医務官が来るまではいます。それに熱中症に僕の手はちょうど良いでしょう?」 手を放してほしいとは言われたが、彼は今もなお冷たい手を私の額に当て続けてくれている。 「身体が冷たくなりがちで、僕にとっては貴女の身体は温かくて気持ちが良いです……あ、変な意味ではないですからね!」 彼は慌てて言葉を付け足したが、気まずさは当然増したらしく、冷たい手が離れるべきか留まるべきかの狭間でもぞもぞ動く。 それがむしろ気になるので、私はその手を掴んで自分のほっぺに当てた。 「身体中熱いので、冷やして貰えると助かります」 「えっ……あの……」 「……やっ、この手の冷たさに今助けられてるって、それだけの意味ですからね!?」 「わ、わかってます!」
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