冷たい手

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神官は精霊と対話し人智を超えた力を使う者たちである。火を出したり、風を操ったり、空気の壁を作ったり。 神出鬼没な魔獣が人を襲うこの世界では、神官は護りの要となる存在だった。この小さな王国が生き残れているのも、神官様が結界によって魔獣の侵入を抑えているからと言われている。 ゆえに王族の次、いや王族並みに権力を持っていて、騎士や文官を召使いのように扱い、好き勝手し放題の連中なのだ。 「彼は最近神官職についた新人くんだ。頭も性格も良い子だよ。彼もそのうち威張り散らすようになるのかねぇ」 医務官はそうボヤいてから、安静にしてろと私に指示を出し、私はギル先輩に担がれて宿舎に戻った。 騎士団の主な仕事は警備である。 第六隊は城下町東地区担当で、二人一組で巡回する。東地区は貧困層の居住地が狭いので、魔獣への警戒が基本業務だ。 私は馬に跨り、ギル先輩の後に続く。 今日も日差しが強くて、ツバが広めの帽子を被り直していると、ギル先輩が声をかけてきた。 「魔獣の出没数が増えてるから、油断するなよ」 「は、はい!……あれ?あの人、神官様じゃないですか?」
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