冷たい手

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帽子に気を取られていた私を注意する言葉に慌てて返事をしたが、ふと視界に入った存在に言葉が漏れる。 そこには黒いローブ姿で大荷物を抱えた、あの時の神官がいた。 ギル先輩も気になったらしく、彼の元に馬を寄せる。 「神官様、どうされましたか?」 「あ。あの時の……」 「俺はギルで、彼女はフレア。その節はありがとうございます」 「いえいえ、僕はクリスチャン。クリスとお呼びください」 お互い名乗り、貧困エリアへと進んで行こうとするクリスをギル先輩が止める。 「この先は神官様は近づかない方が……」 「大丈夫ですよ。僕、ここの出身でして、物資を届けてるんです」 クリスが笑いながら突き進むと、人々が彼に群がった。彼の荷物目当ても多いが、半数近くは彼に声をかけてくる。 彼に合わせるため馬を引いてついてきた私たちは呆然としてしまう。 「貧困層出身でも神官になれるのですか?」 「おまっ……デリカシーはないのか?」 私が思わず尋ねれば、ギル先輩に口を抑えられる。
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