冷たい手

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「構いませんよ。精霊が見えれば出身は関係ないみたいです。精霊が見えるかは、血筋もあるそうですが運らしくて」 「精霊って本当にいるのですか?」 「ええ。ただ、光の粒なので見えていても精霊と気付いてない人も多いと思います。僕がそうでしたし」 神官とこんな風に話せる事はほぼなく、ギル先輩も興味深そうに聞く。 「どうやって気付いたんですか?」 「昔、荷物を盗もうとした相手が神官で、失敗して殺されそうになったんです。そこで初めて神官の力を見まして、僕は見様見真似で力を使い身を守りました。それから、あっという間に神官職です」 彼は遠い目で物資に群がる人々を眺める。 「いつかは盗みをせずに生きたいと思っていましたが、まさかこんな高給取りになるなんて。贅沢なお金の使い方も分かりませんし、こうやって皆に分けてるんです」 クリスの人生は私の想像を超えており、理解が追い付かないが、どうしても気になる事もある。 「盗みの標的にした神官と同僚になったって事ですか?」 「……はい。とても気まずいです。それに貧困層出身のせいか、神官内では……嫌われているみたいですし」 「イジメられてる、とか?」
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