冷たい手

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見れば、クリスの右手が私の左手を掴んでいる。私を守る為に掴んだものだが、掴まれた時に感じた冷たさより、更に冷たくなった気がする。 「油断するなって言っただろう!」 「すみません……魔獣が三体も現れるなんて思わなくて……」 「確かに、一度に二体ですら珍しいが、死んだら言い訳できないんだぞ」 クリスの事が気になったが、ギル先輩の怒声にそれどころではなくなる。そのギル先輩をクリスがなだめつつ、神妙な面持ちで告げた。 「……僕ら神官の責任です。実は国に掛けている結界が弱まっており、魔獣が力を増すタイミングと重なってしまったんです」 「何だよ、それ。国を守るために高い金貰って威張ってんだろ?」 「すみません……」 「……まぁ、最近神官になった貴方に言う事ではないですね」 ギル先輩が苛立ちで口が悪くなったが、しおらしいクリスを前に口調を改める。 そうこうする内に空から書面が届いた。王宮にいる神官からの、騎士たちへの指令である。 そこには、他の守りを固める為に貧困層エリアの守りを無くす事と、それに伴い貧困層エリアに住む者たちを王宮の広間に集めるよう書かれている。
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