冷たい手

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体温は高い方だけど、今日はいつもより余計に熱い気がする。 いつも持ってるはずの剣が重くて、なんだか先輩が歪んで見えて…… 「フレア!」 近くにいるはずの先輩の声が遠くに聞こえて消えた。 ヒンヤリした気持ちのいい何かがおでこに触れていて、ほっぺも冷やしたくてその何かを掴む。 その何かはビクッと動いて、私もビクッと驚いて目を覚ました。 目の前には気まずそうながらも、優しい柔らかい微笑みを浮かべた青年がこちらを見下ろしている。 「気づきましたか?今、貴女のお仲間が医務官を呼びに行っています。このまま寝ていてください」 頭がボォっとして働かず、私が彼を見つめ続けると、彼は私の視線に耐えきれず視線を逸らす。 「あの、できれば、手を放してもらえますか?」 掴んでいる何かが神経質にピクピク動く。 それが彼の手だとわかって、私は慌てて手を放した。 「ごめんなさい!もしかして私、倒れたんですか?」 「はい。たぶん熱中症かと。私はちょうど側を通りかかりまして、医務官を連れてくる間見ている事になったんです」 「あ、ありがとうございます」
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