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「あっ、…あぁん、…ん、っ、いく…ぅっ!」
「あぁ…っ、あかね。…いいよ、お前。…あ…っ、すご。…もぉ…」
ひし、と恋人のようにしがみつき、唇を求めあってびくびくと身体を震わせた。…あぁ。
やっぱりこれがあると落ち着く。今の自分に足りないものなんか特にない、って。いつでもちゃんと確信させてくれる…。
「…それで。どうなの?あれ以来。レスの仮面夫婦の結婚生活は。相変わらず順調?」
くったり力の抜けたわたしの身体を何とかバスルームに運んで洗ってくれる。それはいいけど、脚を大きく拡げるように言われて。そこにぬるいシャワーを当てながら、そんなこと訊かれても。
「あっ、ん。…仮面夫婦だ、なんて。…そんなんじゃ、あたしたち。…ただ、しないだけ。…で」
エッチな気分になりながら彼のことを考えたくない。だから、あまり取り合わずにこんな話題は流したいんだけど。川田はわざとなのか、わたしのそこを集中的に洗いながらその話をやめようとしない。
「そうか?でも、ここの手入れはしてくれないんだろ。普通だったらこの場所って夫の管轄だよな。…ほら、こんなにもの足りなそうに欲しがっちゃって。寂しい、構ってって。きゅうきゅう食いついてくるぞ…」
「あぁんっ、もおそこ、だめ…ぇ」
シャワーで刺激されながら指を挿入されてかき回され、わたしは泣き声を上げてのけぞった。
「ただ洗うだけなのに。なんでそこ、中に入れるのぉ…?あ…っ、もぉ。きれいになったから、いいよ…」
喘ぎながら必死に脚を閉じようとするけど、意地悪な手にぐい、と押し戻された。
「何言ってんだ、中の中まで徹底的に洗わないと。得体の知れない男たちに散々弄ばれたあとだぞ。元どおり綺麗にして。…俺だけの場所に戻すんだからな。お前のレスの旦那なんかのもんじゃないんだから、これ…」
「んっ、あ、そんなこと。…しながら」
敏感なところを摘まれて指を出し入れされて、ひくひくするそこから何かがどっと溢れてくるのを感じながら思わず言葉の続きを飲み込む。
こんな気分のときに無理やり。あの人のこと考えさせるのなんて、もうやめてよ…。
まるで性的拷問だ。激しい快楽の余韻でまだ力も入らず、全身感じやすくなっているところを執拗に責められて。いきそうでいけない状態で焦らされながら、夫に対して不満なところを挙げるようにさり気なく誘導された結果。…いつしか抵抗し切れずに休みを一緒に過ごせない事実について他愛もなく白状させられていた。
「…なるほどね。普段の週末だけじゃなく、年に一度の夏季休暇も一緒に過ごそうとしてくれない、か。ただでさえ向こうが店を閉めて休むのはたった三日間なのに。そのうち一日も妻と共有する気はないってことなんだ」
結局奴の膝の上に跨がらされて、がくがく下から突き上げられて最後までいかされてぐったりとその腕の中に抱きしめられながら息も絶えだえにしがみついている。完全に使い果たして声もろくに出てこないわたしを膝の上であやすように揺すりながら、川田はむしろ面白がる様子で明るく片付けた。
「まあいいじゃん、別に。どうせお前の会社が九連休なのに向こうはたった三日だろ。どのみちほとんど一人で消化しなきゃいけない休暇なんだから…。そんな旦那、いてもいなくてもどってことないよ。どうせ一緒にいてもお前の身体の慰めにもなりゃしないんだし」
「そういうことじゃ。…ないよ」
せっかくなんとかいって終わったのに、また膝の上で揺するのはやめてほしい。変なところが擦れてまた濡れちゃう。わたしは身を捩らせ、力の弱い仔猫のように川田の身体からずり落ちないようにひしとしがみついて呟いた。
「休みを一緒に、過ごさなきゃいけないとかは…。最初から、結婚する前からお互いそれは自由って。納得して決めたことだし。…でも、こう重なると。いつも一体何してるのかな、誰と会ってるのかな。…って」
入籍した時は星野くんが誰と付き合ってようがわたしの見えないところで何してようが特に関心はないと思ってた。でも、やっぱり気になる。
「…例えば、休日に彼の身に何かあったら。わたしは一応家族なのに、あの人がどこで誰と何してるかも知らなくて。…それじゃ、いざという時困るじゃない?」
「うーん、まあな。宿帳記入必要なホテルとかならともかく。公共交通機関とかラブホとかで事件や事故に遭っちゃうと。下手したら愛人ともども身許不明になって終わるかもな」
面白そうに縁起でもないこと言うな。と思うけど。わたしが言ってるのもまあ、概ねそういうことか。
余韻で落ち着かない下半身を跨った膝に切なく擦りつけながら、わたしは喘ぎで声を途切れさせながら弁明を続けた。
「別に、会いに行くなとは言わないんだから。どういう相手とどこに行ってるのかくらいは。少しは報告してくれてもいいんじゃないかなぁと。…思ってるだけ、つまりは」
川田はわざと膝を揺すってわたしのそこを刺激し続けながら、肩を竦めて話に突っ込みを入れた。
「まあ、そうは言っても。今どき鑑定の精度も上がってるだろうし、ほんとの最後の最後まで結局身許が判明しないなんてことそうそうないだろ。あんまり気にすることでもないじゃん?お互い自由って結婚前に確認しあったんなら。そこは説明する義理でもないと思うけど」
甘い気分が多少残ってたのか、わたしは奴の胸に自分の胸をすり寄せて間近なその顔を見上げ、口を尖らせた。
「向こうの肩持つの、川田は?」
「そういうわけじゃないけど。そんなこと訊かれて困るのは、だいいち茜だって同じだろ?何かあったときのために念のため知らせておけ、とか言われて。俺とこの部屋で何してるかいちいち説明させられたら。…夫婦間で独占欲とか恋愛感情なきゃ平気、ってもんでもないだろ」
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