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高嶺の彼女
「ね、あたしって、竹咲さんのなかで、下から何番目?」
想えば想うほど、高嶺の花になっていった竹咲さんと、ようやくおしゃべりにこぎつけたあたしは、学食のうどんを頬ばりながら、何気ないふうを装って尋ねた。まだ、上から何番目かなんて訊ける仲じゃあないから、そう尋ねた。
竹咲さんは、「下から?」と言って軽く吹き出し、それからお箸をどんぶりのフチに当てながら考え込んだ。あたしは緊張で、うどんを飲み込むとき、ごきゅっと音を立ててしまった。
竹咲さんはしばらく後、「88番目かな」と、答えた。「微妙だなぁ」あたしは思わず心の声を口に出してしまった。竹咲さんは微笑んで、こんなことを言った。
「8は末広がりって意味でしょ。明るい未来の可能性、それがふたつ」
そう言って、お蕎麦をすすり、まだポカンとしているあたしを見て、「うまいこと言うでしょ、私」と、あたしに笑顔を投げてから、お蕎麦に七味唐辛子を足した。
「伸びちゃうよ」
あたしのうどんを目線で指した竹咲さんに、あたしは、「鼻の下がね」と返した。それで精一杯だった。
───了
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