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嵐の前の静けさ
「絃ちゃん!こっちこっち」
「あ、志摩さん。すみません、待たせてしまって」
「ううん、俺も今きたとこ」
待ち合わせ場所に着くと既に彼は立っていた。
うーん、私も急いで来たんだけど……あ、そういえば大学は時間割自由に選べるんだっけ。
嘘か本当かは置いといて、そんな私を気遣うためのセリフを言ってくれた彼はどこか複雑そうな顔をしている。
「どうかしましたか?」
「あ……いや、その。俺達付き合っているんだし、名前で呼んで欲しいなぁって。あとできれば敬語も外して欲しい……」
欲張りすぎかな?って赤い顔ではにかむ彼。うーん、なんだろう。すごく可愛い。
凜久とはまた違った可愛さだよね。
「あはは、じゃあ渉くんで。えーっと、よろしくね?」
「!うん!よろしくお願いします!」
あれれ、渉くんの方が敬語になっちゃった。
なんて少しおかしく思いつつも一緒に帰路を辿る。どうやら最寄り駅は同じでも家の方向は反対らしい。だけど彼は当然のように私を家まで送ってくれた。
やっぱり優しいなぁ。
じんわりと胸が温かくなってくる。……弟離れ、できるかもしれない。
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