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「何を怒っているのか知らんが、諦めろ。そして受け入れろよ」
「何をッ!? 何を受け入れろっていうんだ。設定か? この無理ありまくる設定を!? 大体なんで龍神様が人間界にいるんですかっ!」
キャンキャン犬のように喚き散らしてしまうのは、混乱しているからだ。目の前で未知の存在に出くわすと、パニックになって僕の卑小な脳みそはエラーを叩き出してしまうらしい。
もちろん、マイペースな龍神はそんな事お構い無しなんだろう。
「家出だ」
(はァ? イエデ、いえで、家出って言ったなこの龍神)
家出ってあれか。親と喧嘩したりしてするアレ。
「龍神なのに?」
「しちゃ駄目ってことはねぇだろ。大体、俺は年齢的にはまだガキだぜ」
「いやいやいや」
「1600年ほどしか生きてねぇからな」
(人間で言うところの16歳ってことなのかな)
これも安易な設定だ。でも僕はそれを受け入れるしかないらしい。
「にしても、16歳に見えないなァ」
「人を外見で判断するんじゃねぇぜ」
「……人じゃないくせにぃ」
「あァ?」
「す、凄まないで下さいよ」
ヤンキーに、いやヤクザに絡まれてる気分。
するとまだ不満そうな顔をしたヤクザ……いや龍士が言った。
「その喋り方やめろ」
「え?」
「お前は俺の兄貴だろ、そんな喋り方おかしいぜ」
ああ、そうか。確かに言われてみれば違和感かな。
じゃあ……。
「敬語はやめておいたらいいかな、龍士?」
「……」
(お、おい! なんで無言なんだよッ)
「おいっ、君が……っ、ぅわッ!」
妙な顔して黙っていた彼が突然、大きく長い腕を広げ僕を包み込み締め上げた。
突然のハグってやつだ。
「ちょっ、な、なにっ!?」
「……それでいい。よろしくな、慎太郎」
ぼそりと呟かれた声は笑みを含んでいた、気がした。
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