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昨日台風で雨風に晒されたとは思えない天気だ。
目に鮮やかな青い空に白い雲のコントラスト。太陽光が、燦々と乾いたアスファルトに降り注ぐ。
「君も学校行くの?」
「当たり前だ。お前の弟で高校一年生だからな」
「……全然似合ってないね、それ」
「む、そうか?」
やっぱり高校生って無理があるよな。背丈も190センチは超えてるし、筋骨隆々のどこのアスリートだよって感じ。
なんなら僕の方が弟に見える。
「まぁ良いけど、ちゃんと洗脳しといてよ」
ため息をつきながら通学路を歩く。
水溜まりまで出来ていない道は、一体どうなっているんだろう。一晩で干上がったのかな。
「おい、洗脳とはなんだ」
龍士がムッとした声で言った。
「いや、洗脳だろう。母さんもすっかり君が15年前からいたように錯覚しているし」
「神通力だ」
「変わんないよ……」
妙なところでこだわる龍神様だ。
それはともかく、ここまで色々と見せつけられては僕だってこの安易な設定を信じる他ないのだけれど。
「慎太郎、おはよ」
「あ、ああ。おはよう」
後ろから軽やかに肩を叩かれると同時に、ぴょこんと揺れるポニーテールが視界に入った。
天竜 美琴(てんりゅう みこと)、僕の幼馴染でクラスは違うが同学年だ。
気は強いが、顔はとても可愛らしくて男女問わずクラスの人気者タイプだ。
まぁ僕とは正反対ってこと。
「昨日の台風凄かったわね……あれ、この人」
(あ、やばい。美琴は彼と初対面だった)
一瞬慌てふためいたが、彼女がニッコリと微笑み言った。
「……今朝は龍士も一緒なのね」
「え、ああ、まぁね」
ほっとしたやら焦るやら。朝から気疲れする。
そんな僕には気付くことなく、彼女はじゃあねと走って行ってしまった。
「龍士、あれは幼馴染の美琴。いい子だろ?」
「お前のこと、慎太郎って呼んでたな。お前も美琴と呼んでいる」
険しい顔をしているからなんの事かと思ったら。
僕は少しうんざりしつつ訊ねてみた。
「それが何? 幼馴染だし当たり前だろ」
「そうか幼馴染、それだけか?」
それだけってそれ以上に何があるんだ。
確かに彼女はすごく可愛い。それに誰にでも優しくて強い。おまけに頭もいいから成績もいつもトップだ。
だとしても僕が彼女を好きになる事も逆も有り得ない。
そんなのは漫画の世界だけだよ。リアルじゃあない。幼馴染なんていうのはそんなもんさ。
(さてはこいつ、美琴の事を気に入ったのかな……)
まぁ別に止めはしない。恋愛は自由だ。それはきっと龍神様でも同じなんだろう。
「不貞腐れてないで、さっさと行こう。遅刻しちゃうぞ」
「むぅ、不貞腐れてなんてないぜ」
「その顔だよ! ほら、男前が台無しだよッ」
そう言って走り出すと、何か言いたげな顔を一瞬したが彼も大人しくついてきた。
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