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接吻と言うより栄養補給
固いコンクリートの床の上での目覚め……ではない。
「ぅ、う、ん? ここ、は……」
身体に触れるピンク色のシーツ。皺の出来加減も肌触りも覚えがある。
部屋の空気も目に見える箇所の家具も壁も、見覚えがあるものばかり。
(僕の、家のベッド?)
慎重な僕は微かな軋みを立てながら、そろりと寝返りを打つ。
「ヒィッ!」
喉の奥から引き攣れた悲鳴が出た。
だって、仕方ないだろ!
……すぐ目の前に知らない男がいるんだから。
(な、な、何? 何? え、何?)
馬鹿みたいに『?』しか浮かんでこない。
寝返り打ったら知らない男だよ。気絶しなかっただけ褒めて欲しいくらいだよ!
(ね、寝てる……?)
男は脇に座って、顔だけベッドに載せる形で微かな寝息を立てて眠っている。
顔を見ると、なんて言うか恐ろしく。
(び、美形だ)
美丈夫って言うんだっけ。濃い眉に同じかそれ以上に彫りの深い濃い顔。まつ毛は長くてバサバサしてるし、全ての顔のパーツが整っていて美しい。
分厚めの唇が妙にセクシーで、ハリウッドかなんかの人気俳優みたいだな。
(なんなんだこの人……)
「あッ!?」
(全裸だッ! こいつ、真っ裸じゃあないかぁぁっ!)
そう。今更気がついた。枕元にいるだけでも怪しい知らない男。さらに服も着てないことに。
首から下は肌色一色……あ、今は薄橙色だっけ? って、どうでもいいよ! なんて寒いひとりツッコミが頭をよぎる。
ああ、見たくないのに見てしまう。見事に割れた腹筋のその下、下腹部の茂みの更に……うわぁぁ、グロテスク! 僕にも同じモノついてるけど、大きさが違うとこんなにグロテスクなのか!?
「……って何まじまじ見てんだ僕はッ!」
(へ、変態? 不審者? 強盗? なぜ全裸……)
「あ」
そこで間抜けな僕は思い出した。
空から降ってきた全裸男のことを。
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