接吻と言うより栄養補給

1/4
前へ
/29ページ
次へ

接吻と言うより栄養補給

固いコンクリートの床の上での目覚め……ではない。 「ぅ、う、ん? ここ、は……」 身体に触れるピンク色のシーツ。皺の出来加減も肌触りも覚えがある。 部屋の空気も目に見える箇所の家具も壁も、見覚えがあるものばかり。 (僕の、家のベッド?) 慎重な僕は微かな軋みを立てながら、そろりと寝返りを打つ。 「ヒィッ!」 喉の奥から引き攣れた悲鳴が出た。 だって、仕方ないだろ! ……すぐ目の前に知らない男がいるんだから。 (な、な、何? 何? え、何?) 馬鹿みたいに『?』しか浮かんでこない。 寝返り打ったら知らない男だよ。気絶しなかっただけ褒めて欲しいくらいだよ! (ね、寝てる……?) 男は脇に座って、顔だけベッドに載せる形で微かな寝息を立てて眠っている。 顔を見ると、なんて言うか恐ろしく。 (び、美形だ) 美丈夫って言うんだっけ。濃い眉に同じかそれ以上に彫りの深い濃い顔。まつ毛は長くてバサバサしてるし、全ての顔のパーツが整っていて美しい。 分厚めの唇が妙にセクシーで、ハリウッドかなんかの人気俳優みたいだな。 (なんなんだこの人……) 「あッ!?」 (全裸だッ! こいつ、真っ裸じゃあないかぁぁっ!) そう。今更気がついた。枕元にいるだけでも怪しい知らない男。さらに服も着てないことに。 首から下は肌色一色……あ、今は薄橙色だっけ? って、どうでもいいよ! なんて寒いひとりツッコミが頭をよぎる。 ああ、見たくないのに見てしまう。見事に割れた腹筋のその下、下腹部の茂みの更に……うわぁぁ、グロテスク! 僕にも同じモノついてるけど、大きさが違うとこんなにグロテスクなのか!? 「……って何まじまじ見てんだ僕はッ!」 (へ、変態? 不審者? 強盗? なぜ全裸……) 「あ」 そこで間抜けな僕は思い出した。 空から降ってきた全裸男のことを。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加