接吻と言うより栄養補給

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「どういう……」 問ただそうと震える口を開けば、玄関の鍵とドアが開くガチャという音が耳に入る。 「や、やばいッ。母さんだ」 時計は見えないが、いつもより少し早いかも。やっぱり台風の影響かな……もう風も雨も止んでいるみたいだけど。 「慎太郎、部屋に居るの? 慎太郎!」 僕の名を呼びながら、廊下を歩き階段を登っていく音がする。 「ああっ、もう! これ、この状況どうすんだよ……」 脱力した身体を気合いで起こして頭を抱えた。 考えても見て欲しい。息子の部屋に知らない全裸男が立ってたら普通に驚くだろう。 「せ、せめて服着て! ええっと、これ? あー、入らないか……ああもうッ」 この男ガタイ良すぎ! 僕だってそれなりの背丈もある男だけどさ。なんだろう、美術室とかある石膏像みたいなあんな感じ。 肉体美ってヤツなんだろうけど、今の状況は最低だ。僕の持ってる服が尽く入らない! 「おい。お前なにしてる」 「なにって服だよ!」 「服? その布か……ふむ」 軽く頷くと、パチンッと指を鳴らした。 途端、突然男の背後から水の帯びのようなモノがシュルリシュルリと出てくる。 長いそれはあっという間に男の身体を覆って、数秒後にパチンッと弾けた。 「わっ! え、え? え?」 (て、手品ぁ!?) すると目の前の全裸男は、全裸じゃあなかった。 何を言ってるのか分からないと思うけど、瞬きもせずに今見た真実なんだ。 例えるならテレビで昔見た手品の早着替え? みたいな感じ。水の帯が覆っていた身体から弾けて消えると、その下から服を着た男の身体が現れた。 「しかも……なんで制服?」 僕の通う高校のブレザーを着ている筋骨隆々なイケメン。悪いけど高校生に見えない。 「あれだ」 指を指した先の壁には僕の制服が掛かっている。 そう言えば、身辺整理としてカッターもまとめて置いておいたんだった。 「あ、貴方……なんなんですか?」 少なくても人間じゃあない。でも聞かずには居られなかった。 男は事も無げに言い捨てた。 「俺か。ああ、お前達の言うところの龍神ってやつだぜ」
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