その雲の上から

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その雲の上から

横殴りの雨と激しく頬を打ち付ける風。 そう。今日の天候は暴風雨。 そんな日なのに。 僕、六花 慎太郎(ろっか しんたろう)が今いるのは通ってる高校。 勿論、今日は休校だ。 今頃皆、家に引きこもって気象予報や台風被害のニュースのひとつでも見ているだろう。 それくらい大型で強い台風との予報なんだ。 (あー、雨と風が気持ちいい) 学校の屋上。 この日の為に鍵も壊したし、侵入経路も完璧に確認した。 見下ろすと、いつもと少し違う世界が広がっている。 あんなに色褪せていたのに、今はとても鮮やかに僕の足元に手を伸ばしてくるようだ。 冷たく固そうなコンクリート。 そこに飛び込んでこの身を委ね尽くしたら。 こんな僕でも、一輪くらい綺麗な紅い華が描けるだろうか。 ―――そう、僕は今から飛び降りる。投身自殺をするんだ。
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